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【コラム】パナマ文書、既存勢力の信頼失墜で改革困難に-エラリアン

いわゆるパナマ文書でオフショア口座の実態が明るみに出たことで、各国政府は違法な脱税だけでなく、合法的な税逃れの取り締まりも強化しそうだ。

  政府高官の権威を問う市民の不満は強まるだろう。これで法務執行のための措置も強化される方向だ。一方で既存の政治の信頼性や有効性がいっそう損なわれ、不測の事態も生じ得る。

  世界金融危機を経て、富める者とそうでない者の格差は危険なほど大きい。こうした状況で、統治される側が脱税と節税の法的な区別を受け入れる余地は小さい。両方とも単なる税金上の問題ではなく、裕福で社会的地位のある者が享受する不公平な特典としての「税逃れ」と見なされるためだ。

  1100万ページ以上にも上るパナマ文書が先週暴露された後、政治的な反響は早かった。しかもさらに広がる公算が大きい。このスキャンダルですでにアイスランドの首相が辞任し、英国ではキャメロン首相が(選挙で選ばれた最高権力者としては初めて)納税記録の公開に迫られた。アルゼンチンでも突然、マクリ新大統領就任の祝賀ムードが暗転した。

  さらにドイツなど数カ国が、富裕層が利用する合法だが倫理的に問題のある税逃れの仕組みについて調査を強化する方針を打ち出している。

  パナマ文書は既存の政治勢力に打撃を与える。政府が税逃れを見て見ぬふりをしていると感じていた大多数の市民は、政府への反感をいっそう強めるだろう。大半のケースでは何の法律にも違反していないが、特権階級には一般市民とは異なるルールが適用されるという認識をあおるには十分な材料だ。

  こうした市民の怒りがくすぶり続け、既存勢力への反発的な行動があおられれば、既存政党は団結して経済成長に必要な構造改革を実施しづらくなる。これが不公平を悪化させ、表面的な金融の安定を脅かす恐れもある。

(このコラムの内容は必ずしもブルームバーグ・エル・ピー編集部の意見を反映するものではありません)
  
原題:The Panama Papers’ Consequences: Mohamed A. El-Erian(抜粋)

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