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日銀次の標的は財投機関債か、経済対策支えるも「ますます困る」の声

更新日時
  • 財投機関債や地方債購入も議論の俎上にのぼる可能性-三菱モルガン
  • すでに低下している利回りがマイナス圏に突入の可能性

日本銀行が、9月20-21日の金融政策決定会合で追加緩和策として財投機関債や地方債の買い入れに踏み切る可能性があるとの見方が市場関係者の間で出ている。日銀による財投機関債の購入は、政府の大規模な経済対策を進めるための資金調達を下支えする効果もある。

  野村BPIの地方債指数によると、日銀黒田東彦総裁が1月にマイナス金利導入を発表する前から、利回りは26日までに19ベーシスポイント(bp)下落し、0.09%となった。国債利回りがマイナス圏に沈む中、投資マネーの数少ない行き場となってきたのが背景だ。償還まで残存10年の高速道路機構の財投機関債の利回りは同期間に0.4%から約3分の1の0.13%となった。

Bank of Japan Governor Haruhiko Kuroda Speaks at FinTech Forum

黒田日銀総裁

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  日銀は9月の会合にて金融緩和政策の「総括的な検証」を行うとしており、多数の市場関係者が追加緩和を行うと予想している。日銀は国債に加え、企業の資金調達支援につながる普通社債や指数連動型上場投資信託(ETF)などをすでに購入しているが、財投機関債や地方債は買い入れ対象にはなっていない。日銀が財投機関債の購入に踏み切れば、安倍晋三首相が2日に発表した総額28兆円の経済対策を支えることにもつながる。

マイナス金利で地方債・財投機関債の利回り低下

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所の宮嵜浩シニアエコノミストは電話取材で、9月の日銀会合で「財投機関債や地方債の購入開始も、議論の俎上(そじょう)にのぼる可能性が高い」と語った。さらに政府がリニア中央新幹線の開業前倒しなどにインフラ整備に力を入れる中で、財投機関債は「インフラ投資へのファイナンスを円滑にするという意味で、買い入れの対象にすることは、日銀としても合理的な判断だ」との見方を示した。

  日銀の広報担当者は、次回会合で財投機関債や地方債の買い入れを決定する可能性について、ブルームバーグの取材に対しコメントを控えた。

やがてマイナス利回りへ

  合計残高93兆円と、国債の約10分の1の規模にとどまる財投機関債や地方債の買い入れには、副作用を指摘する声もある。SMBC日興証券の伴豊チーフクレジットアナリストは、これらの債券の主要投資家である銀行は、マイナス金利政策の影響で国債や日銀当座預金の積み増しが難しくなる中で、「仕方なく地方債や財投機関債を買っているが、それが買えなくなったらますます困る」と語った。伴氏は同債券の利回りがマイナスになるとみている。

  大和証券の大橋俊安チーフクレジットアナリストも、地方債や財投機関債が購入対象になる可能性があるとみている。ただ「購入が始まれば日銀に高く売ることができるが、その影響で市場にはマイナス利回りの債券が増え、結果的に運用難となる投資家が増える」と述べた。

  財投機関債は、日本政策投資銀行、高速道路機構といった政府系機関が発行する政府保証が付かない債券で、地方債は地方公共団体による債券。

  パインブリッジ・インベストメンツ債券運用部の松川忠部長は、日銀が「国債を買って、財投機関債は買わないという理屈はあまりない」と指摘。財投機関債と地方債はともに需要超過の状況が続いているが、「あまり発行されない物よりは、今後発行が増える物の方が買える余地がある」として、インフラ整備などで発行増の可能性がある財投機関債の購入がより合理的との見方を示した。

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