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ブラックスワン再来、トランプ氏勝利で金融市場に広がる不安の声

  • メキシコペソは対ドルで最安値更新、日経平均は一時1000円超の下げ
  • 財務省と金融庁、日本銀行の幹部は円相場の急騰受け会合

市場が注目した米大統領選挙は、共和党候補のドナルド・トランプ氏が予想外の勝利を収めた。東京時間の金融市場では、トランプ氏優勢が報じられるにつれて、円高・株安・金利低下が鮮明となり、リスク回避の動きが広がった。

  この日の取引で最も早くからトランプリスクに警戒心を示したのは外国為替市場。トランプ氏が不法移民問題でやり玉に挙げたメキシコのペソは対ドルで急落し、最安値を更新した。一方、円は主要通貨に対して全面高となり、対ドルでは英国民投票で欧州連合(EU)離脱派が勝利した6月24日以来の上昇率を記録した。日経平均株価は一時1000円を超える値下がりとなり、長期金利の指標となる新発10年物国債利回りはマイナス0.085%と9月末以来の水準まで下げた。金相場は急騰、原油先物は下げている。

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米大統領選挙集会でうつむく表情の女性たち

Photographer: Anthony Kwan/Bloomberg

  みずほ証券の末広徹シニアマーケットエコノミストは「市場的には完全にBrexit(英EU離脱)の再現、ブラックスワンの再来だ」と指摘。「トランプ氏の政策を中長期的に考えればドル高や財政拡張による米金利上昇の可能性があるものの、相場は完全なリスクオフで円買い・債券買い・株売りで反応している」と述べた。

  日本時間午前に開票作業が始まると、トランプ氏は事前の世論調査で自身が優位とされた州に加え、フロリダ、オハイオ、ジョージア、ペンシルベニアなどの激戦州で相次ぎ勝利。午後4時半すぎには、トランプ氏が次期米大統領になることが確定した。

  こうした中で市場関係者から異口同音に指摘が出ていたのはコンピューター自動取引「アルゴリズム」の存在だ。ドル・円相場では、開票速報が流れて2時間程度しかたたない東京時間午前11時ごろには、トランプ氏優勢に敏感に反応して、円買い・ドル売りが鮮明となった。前日の安値104円30銭台を下回ると、ドル売りがさらに加速し、10月3日以来の安値となる101円20銭までドル安・円高が進んだ。 

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  株式市場では、日経平均株価が日中の取引で英国のEU離脱投票結果が判明した6月以来の下げ率を記録。米S&P500種株価指数先物は値幅制限の5%まで下げ、米10年物国債利回りは一時1.71%と約1カ月ぶりの低水準を付けた。

  米国のオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)に基づく12月の米利上げ予想の確率は一時50%を割れた。米東部時間8日午後5時(日本時間9日午前7時)時点は82%だった。

  しんきんアセットマネジメントの加藤純シニアファンドマネージャーは、来月の米利上げの可能性は「現政権下でもあり、かえって高まった」と分析。今後はトランプ政権の経済政策や政権陣容が焦点になるが、ドル・円の水準については「ドル安志向や来年以降の米利上げペースの不透明感を考えると、円高圧力は根強く、年末に100円前後」と読む。

  財務省と金融庁、日本銀行の幹部は、米大統領選の接戦で円相場が1ドル=101円台に急騰したことを受け、財務省内で当局者会合を開いた。浅川雅嗣財務官は会合後、為替市場では投機的な動きが出ており、市場の荒れが続くなら必要な措置を取るとけん制。ただ、主要7カ国(G7)での対応は今のところ考えていないと述べた。 

  しんきんアセットマネジメントの加藤氏は、為替介入の可能性について、「それこそ今日一日で、さらに5円落ちるようなこともない限り、当局は今日のように口先介入の動きにとどまるだろう」と話した。

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