コンテンツにスキップする
Subscriber Only

ドッド・フランク法見直しは容易でない、政策というよりショー的要素も

  • 大統領令は長く複雑なプロセスの単なる出発点
  • トランプ大統領指名の政権幹部、関連機関をまだ掌握していない

トランプ米大統領は3日、金融規制改革法(ドッド・フランク法)の見直しを命じる大統領令に署名したが、整備に7年を要した同法の見直しは容易ではない。

  従って、同法の一部撤廃や緩和を目指した大統領令は政策というよりもショー的な要素が大きいと、同法の成立に携わった議員や元政府当局者らが指摘した。法改正が迅速に進むとの期待から3日は銀行株が上げたが、銀行に恩恵が及ぶまでには障害が多そうだ。

  その第一はトランプ大統領が指名した政権幹部がまだ金融規制を担当する機関を掌握していないことだ。また、ドッド・フランク法のさまざまな規則を緩和するには議会が新たな法を成立させなければならない。ゴールドマン・サックス・グループの元パートナー2人をドッド・フランク法見直しの中心に据えたことは民主党の反発を悪化させた。

  リテール銀行業界の団体、コンシューマー・バンカーズ・アソシエーション(CBA)を率いるリチャード・ハント氏は、トランプ氏の大統領令は「実際の行動というより市場へのシグナルだ」と言う。

  トランプ大統領は金融規制に関する検証結果を120日以内にまとめることを命じた。政権が標的にするのは自己勘定トレーディングの禁止や高リスク金融機関に対する連邦準備制度理事会(FRB)の厳しい監視、破綻銀行の整理に関する規則などだ。米消費者金融保護局(CFPB)も標的になる可能性がある。

  トランプ氏は選挙戦中、経済的ポピュリストを自称し銀行業界を批判することも多かった。しかし新政権にはゲーリー・コーン国家経済会議(NEC)委員長と財務長官に指名されているスティーブン・ムニューチン氏という2人のゴールドマン出身者が加わっている。トランプ大統領は3日、金融規制の修正についてJPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)という最良のアドバイザーから意見を聞いていると語った。

  エリザベス・ウォーレン上院議員(民主・マサチューセッツ)は、トランプ氏が「大手銀行とヘッジファンドのCEOらと文字通り並んで」ドッド・フランク法見直しを発表したと批判した。民主党大統領候補の座をヒラリー・クリントン氏と争ったサンダース上院議員(バーモント)も5日CNNの番組で、トランプ氏は「ペテン師」だとし、実はウォール街のために働いていると断じた。「政権幹部に指名されたのは超富裕層ばかり。金融問題の主要なアドバイザーはゴールドマン・サックス出身で、今や消費者保護の法律を解体しようとしている」と話す。

  とはいえ、トランプ氏は単独で法律を撤廃できるわけではない。銀行から苦言を呈されている消費者金融保護局にしても、新しい法律ができない限り機能し続ける。法改正には共和党が52議席しか持たない上院で60人の支持が必要になるなど、議会の協力が求められる。ドッド・フランク法の運用についての規則を作った各機関が変更を行えるという議論もあるが、ムニューチン氏はまだ正式に財務長官に就任していないし、他の機関にもオバマ政権が指名したトップが残っている。

原題:Dodd-Frank’s Tentacles Go Deep. They Won’t Be Cut Fast or Easily(抜粋)

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE