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国内の薬価毎年改定で広がる波紋、海外製薬各社は収益減を懸念

  • 日本の医薬品市場規模は25年までに3割減-米国研究製薬工業協会
  • 新薬の国内発売が遅れる可能性も、海外製薬会社が対日投資減なら

政府が薬剤費の膨張に歯止めをかけるために毎年薬価を改定すると決めたことで製薬業界に波紋が広がっており、世界第3位の日本市場が縮小する可能性もある。

  政府は昨年12月、市場の実勢価格を反映させるため、これまで2年に1回だった薬価改定を毎年実施する方針を発表。年間約9兆円規模の薬剤費は膨張を続けており、医療保険財政を圧迫していることが薬価改革の背景にある。

  米国研究製薬工業協会は日本の医薬品の市場規模が2025年までに3割減の620億ドル(約7.1兆円)になると試算。同協会のエイミー・ジャクソン日本代表は、日本政府の方針は多国籍製薬会社による対日投資を他の国に振り向けてしまう危険性があると指摘する。「日本で治験を行う投資意欲を著しくそぐものだ」とし、実際にそうなった場合には、国内での新薬発売までにこれまでより長い時間が必要になるかもしれないとの見方を示した。

  ジャクソン氏によると、これまで多国籍製薬企業が日本での投資を増やしてきたのは、日本政府が10年に画期的な新薬の価格を維持する方針を示したためだと説明する。同協会の調査によると、厚生労働省に対して15-19年に製造承認を申請する見通しの薬の数は、06-09年比で倍増する見通し。さらに、13-15年に日本で行われた治験数は21%増加した。

  同省保険局医療課の目黒芳朗氏は、薬価制度改革の狙いについて「国民皆保険の持続性とイノベーションの両立が重要でそれを目指している」とし、「最終的には国民が恩恵を受ける国民負担の軽減と医療の質の向上を実現する」と話した。

費用対効果の仕組み

  改革では年1回の薬価改定に加え、新しい効能が追加された際に薬価を見直す仕組みや、費用対効果の評価を本格的に導入する。近年、小野薬品工業のがん免疫療法薬「オプジーボ」やギリアド・サイエンシズのC型肝炎治療薬「ソバルディ」といった高額な新薬が登場しており、機動的に対応するのが狙い。オプジーボの価格はすでに半額に、ソバルディの価格は約3割引き下げられている。

  小野薬広報担当の谷幸雄氏は、18年4月の通常改定時にオプジーボの薬価が切り下げられる可能性は想定していたが、「改定時期が14カ月前倒しになった点は想定外だった」との考えを明らかにした。国民皆保険制度の維持に配慮が必要なことや、高額薬剤の議論が高まったことでオプジーボの使用を自粛する動きもあり「本来必要な患者さんに行き届いていないといった状況などを総合的に踏まえ、今回の緊急的な対応について受け入れざるを得ないと判断した」という。

  厚労省は昨年、高額医薬品の費用対効果を分析する制度の対象として、7種類の医薬品を発表。これにはソバルディ、ハーボニー、オプジーボのほか、中外製薬の乳がん治療薬「カドサイラ」などが含まれている。分析結果は今年にも発表される見通しだ。

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