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日銀の隠れた緩和縮小、国債からETFへ-購入減との見方

更新日時
  • 発表文にETF購入額の変動を明記、国債はすでに減額
  • 株価が大きく下がるほどは減らさないと野村証の桑原氏
Pedestrians cross a road in front of the Bank of Japan (BOJ) headquarters in Tokyo, Japan.
Pedestrians cross a road in front of the Bank of Japan (BOJ) headquarters in Tokyo, Japan. Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

日本銀行が指数連動型上場投資信託(ETF)買い入れ額の変動を決定したことを受け、「ステルス・テーパリング」(隠れた緩和縮小)が長期国債からETFにも拡大する観測が市場で広がっている。

  日銀は7月の政策決定会合で、ETFの買い入れ額を据え置いた上で、「市場の状況に応じて、買い入れ額は上下に変動しうる」と発表文に明記した。誘導目標を金利に変更した2016年9月の長短金利操作導入後、長期国債の購入額は徐々に減少しており、ETFも同様に減額されるとみられている。

  マネックス証券の大槻奈那チーフアナリストは、ETF購入額の縮小について「宣言するかどうかは別としても、実体としては減額していくのではないか」と話す。緩和の副作用に関し「今回は銀行に対して配慮した。次は株式市場をどうするか」が問題だという。

  年間6兆円ペースとしていた昨年のETF購入額は5.9兆円。一方、年80兆円をめどとする長期国債の保有残高増加額は、現在は年間約47兆円相当まで縮小した。異次元緩和の開始から5年が経過し、緩和の出口への道筋が市場を左右する。

  買い入れ額の変動の明記に加え、日銀はETF購入で日経平均連動型を減らし、TOPIX連動型を増やした。日経平均型は対象銘柄が少なく、個別銘柄の株価をゆがめているとの指摘が出ていた。みずほ証券の6月26日時点の推計によると、アドバンテスト(時価総額に占める比率24.6%)やファーストリテイリング(同22.5%)、太陽誘電(20.8%)、TDK(19.9%)などで日銀が筆頭株主になっている。

  ただ東海東京調査センターの平川昇二チーフグローバルストラテジストは購入額が減少しなければ「なんら状況は変わらない」と指摘。「TOPIX型に移行したというのは形だけ」だとして、購入額そのものの減額を予測した。

  ETF購入方法にも変化が出てくる可能性もある。従来、市場では午前の取引で下落すれば後場は日銀が購入に動く可能性が高いと認識されてきた。

  東海東京調査センターの平川氏は、購入時の下落幅の水準が大きくなると予測。「毎日買う金額自体は変えないだろうが、タイミングや回数は変えるのではないか」と分析した。

  市場への悪影響を抑えるため減額は慎重に行われる見通しだ。野村証券の桑原真樹シニアエコノミストは「国債のステルス・テーパリングのケースでも、金利が上方向に反応しないのを確かめて減らしていった。ETFの買い入れ方針を理由にして株価が大きく下がってしまうほどには減らさないだろう」と話した。

  決定会合以降、日本株市場は弱含む展開となっている。7月31日から8月10日までの間、日経平均株価は1.1%、TOPIXは0.8%下落した。日銀は10日、今月初となる通常のETF購入を実施し、703億円を買い入れた。

(最終段落に日銀のETF購入についての記述を追加しました.)
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