東京地検:ゴーン容疑者を特別背任と金商法違反の罪で追起訴
鈴木偉知郎-
日産ゴーン前会長の勾留長期化、追起訴で3月10日まで延長の可能性
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弁護人は保釈申請、初公判まで少なくとも半年はかかるとの見方も
東京地検は11日、日産自動車前会長のカルロス・ゴーン容疑者らを会社法違反(特別背任)と金融商品取引法違反の罪でそれぞれ追起訴したと発表した。
地検の発表資料では、ゴーン被告は自己の資産管理会社と銀行の間の金融取引で生じた評価損を一時的に日産に付け替えて負担義務を負わせたほか、契約を自身の資産管理会社に戻すにあたり、協力者に計1470万ドル(現在のレートで約16億円)を日産子会社から振り込ませたとしている。
一方、地検は直近3年間のゴーン被告の報酬が計約71億7500万円だったにもかかわらず、同29億400万円と有価証券報告書に虚偽記載したとして金融商品取引法違反の罪で同被告と日産前代表取締役のグレゴリー・ケリー被告、法人としての日産を起訴した。
東京地検の久木元伸次席検事は会見で、「起訴して裁判を行うに値する事件。有罪を得られると判断して起訴した」とコメント。捜査が終了したかどうかについては捜査の見通しに関わるためコメントを控えるとした。ゴーン被告の今後の勾留期限は3月10日になるとした。
日産は追起訴を受け、11日付でゴーン被告を会社法違反の疑いで東京地検に刑事告訴したと発表。金融商品取引法違反の罪で日産が起訴されたことについては大変重く受けとめているとし、今後さらなるガバナンスの強化に努め、コンプライアンス(法令順守)経営に努めるとした。ゴーン容疑者の弁護を担当する大鶴基成弁護士は追起訴を受けて地裁に保釈を請求したことを明らかにした。
両被告は昨年11月、2011年3月期から5年間の役員報酬を過少記載したとして金商法違反の疑いで特捜部に逮捕され、12月10日に同罪で起訴された。同日に直近3年間の有価証券報告書への報酬の虚偽記載容疑でも再逮捕されたものの、処分が保留されていた。一方、ゴーン被告は12月21日に特別背任容疑でも再逮捕。ケリー被告は26日に保釈されていた。
ゴーン被告はこれまで2カ月弱の間、東京拘置所に勾留されている。特別背任罪での起訴を受けて、保釈請求が認められなければ勾留期間が新たに2カ月生じるほか、裁判所の判断により勾留期間は1カ月ずつ更新することも認められている。
大鶴弁護士は8日、日本外国特派員協会での会見で、今回のように特別背任事件で被告が全面否認している場合、一般的に裁判所は初公判まで保釈を認めない場合が多いと指摘。非常に難しい事件で、かつ証拠資料も英語や日本語などが混在しているため、これまでの案件だけでも裁判が開かれるまでに少なくとも半年はかかるとの見通しを示していた。
一方、勾留が長期化するなかで大鶴弁護士はゴーン被告が9日夜から高熱を出して医師から安静が必要との診断を受けたことを明らかにしていた。11日までには体温が下がり、弁護人や大使館関係者との接見を再開したという。
ゴーン前会長、ケリー前代表取締役逮捕からの経緯 |
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