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「空飛ぶ車」にゴールドラッシュの熱気、みずほ銀なども出資 (訂正)

訂正済み
  • スマホゲームのコロプラ創業者、数百億円規模のファンドも視野
  • 空陸両用機や無給油8000キロ飛行の計画も-規制緩和や法整備課題

都心のビルの屋上でスマートフォンを手にした女子高校生が待っているのは、空から舞い降りる1台のタクシー。

DroneFund

空飛ぶクルマの例

Source: Drone Fund (Illustration by Yamaki Takumi)

これは投資家の千葉功太郎氏が描く2025年の未来予想図だ。スマートフォン向けゲームアプリの普及を見越して「コロプラ」の創業と上場に関わった千葉氏がいま注目するのは、ドローン技術の応用で普及が期待される「空飛ぶクルマ」だ。陸の道路と比べてほとんど未開拓の空に人間の活動領域が拡大することで、新たな「空のゴールドラッシュ」が起きる可能性が高いとみている。

  リクルート出身で現在44歳の千葉氏がドローン関連のスタートアップ企業に投資するベンチャーキャピタルを立ち上げたのは17年6月。年末までの出資完了を目指す2号ファンドでは最大50億円の資金調達を目指し、初期投資家としてみずほ銀行、KDDIなどが名を連ねる。20年ごろに予定する3号では、「最低でも100億円、できれば500億円くらいの規模」を集めたいという。

  ドローンといえば、現時点では観光地などの空撮に使われる小型機のイメージが強いが、高出力モーターやセンサーなどを搭載し、操縦者なしに垂直離着陸して人やモノを無人で運搬させる計画が国内外で進んでいる。安全面などの課題は多いものの実現すれば消費者のメリットは大きく、米コンサルタント会社、マッキンゼーは米国だけで26年までに市場規模が460億ドル(約5兆1700億円)程度まで成長する可能性があり、近い将来に通勤などの交通手段として広く使われる時代が来るとみている。

Drone Fund General Partner Kotaro Chiba Interview

千葉功太郎氏

Photographer: Kentaro Takahashi/Bloomberg

  ドローンに特化したファンドはまだ珍しく、1000万ドル(約12億円)以上の資金規模を持つファンドは米国と中国にそれぞれ一つずつしかないという。千葉氏は市場が急拡大する可能性が高いとみて、総額約16億円を集めた第1号ファンドでは自らも1億5000万円を出資した。ファンドが出資したなかで新規上場する企業も「1-2年後くらいから少しずつ見えてくるのではないか」とみる。

  千葉氏が副社長を務めたコロプラは、「ディズニーツムツムランド」などのヒットで時価総額1000億円規模の企業に成長した。こうした新しい市場では先行者利益が大きく、「ルールを作った人が一番、新しい世界の力をもつことになり、財をなす可能性がある」と話す。同氏のファンドにはサッカー元日本代表の本田圭佑選手も資金を提供しているという。

  経済産業省は8月、空飛ぶクルマの普及を目指して民間企業も交えた協議会を立ち上げた。協議会には千葉氏のファンドも参加し、官民一体となって議論を進めることで規制などのルール作りを急ぐ。民間シンクタンクのインプレス総合研究所によると、国内のドローンビジネスの市場規模は24年度に昨年度比約7倍の3711億円への拡大が見込まれている。

富裕層ターゲット

  空飛ぶクルマとして使えるドローン機の開発、製造に賭ける実業家もいる。空飛ぶクルマの普及を目指す有志グループ「カーティベーター」を立ち上げた中村翼代表もその一人だ。

  大手国内自動車メーカー勤務の経験がある中村氏は、飛行と陸上走行の両方が可能な「スカイドライブ」を23年に2000万円台で販売を開始することを想定している。質感や居住性を高め富裕層やシェアリングなどの用途での利用を想定しているという。カーティベーターも経産省の協議会にも参加しており、大手企業などとルール作りなどで議論を進めている。

Hover Bike

Hover Bike

Source: Aerial Lab Industries

  千葉氏がこれまで1号ファンドを通じて投資した企業のうち、エアリアル・ラボ・インダストリーズ(東京)は地上数十センチを飛行するホバーバイクの導入を進めている。米セイバーウィング・エアークラフトが開発を進める無人貨物輸送機は、約8300キロの距離を給油なしでノンストップ飛行できる仕様を目指す。20年に計画する初フライトでは日本から本社があるカリフォルニア州まで結ぶ予定だ。

  海外では大手企業の参入も相次いでいる。カーシェア大手の米ウーバー・テクノロジーズは「エアタクシー」のコンセプトで23年の実用化を目指し、独フォルクスワーゲン傘下の高級ブランド、アウディなど既存の自動車メーカーも独自に開発を進めている。
  
  千葉氏は空飛ぶクルマが普及すれば現在の「車産業のような世界ができ、産業ピラミッドができる」、「これから未来のトヨタやデンソーみたいな会社が立ち上がってくる」とみており、現段階での数百億円の投資は大海の一滴にすぎないと考えているという。自身でも数十機を保有するドローン好きで「ドローンが当たり前のように飛ぶ」時代に向けて、「エアモビリティを基本とした社会を立ち上げる手助けをしたい」と話した。

   SBI証券の雨宮京子シニアマーケットアドバイザーは、空飛ぶクルマについて、特例での使用許可が出やすいへき地の救急医療や災害救助などで実績を残せば普及の機運が「一気に進む可能性がある」と指摘。これまでほとんど手つかずだった空の活用が進み、さまざまな関連サービスもうまれて巨大産業に成長する可能性は十分にあると述べた。普及には規制緩和が必要で事故時の責任分担なども含めて早急に法整備を進める必要があると述べた。

(6段落目の本田選手の名前の漢字を訂正します.)
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