来年度予算は2年連続100兆円上回る-険しい財政再建への道のり
占部絵美、竹生悠子
更新日時
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10年連続で新規国債発行減額、甘い税収見積もりの指摘-市場関係者
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税収の前提となる政府経済見通しは実質1.4%成長、市場予想上回る
政府は20日、2020年度一般会計予算案を閣議決定した。当初予算ベースでの総額は過去最高の102兆6580億円となり、2年連続で100兆円を上回った。消費税率引き上げで税収は過去最高を見込むが、歳入を上回る歳出を補うための新規国債発行が続き、財政再建の道のりの険しさが浮き彫りとなった。
歳出の内訳:
- 一般歳出は63.50兆円、うち社会保障関係費は35.86兆円
- 利払い費に当たる国債費は23.35兆円、19年度比0.16兆円減(積算金利1.1%)
- 地方交付税交付金は15.81兆円
歳入の6割を占める税収も過去最高を更新する。消費税率引き上げ効果が通年で寄与するほか、経済対策効果を織り込み、税収の前提となる20年度の政府経済見通しは実質成長率1.4%と、ブルームバーグ集計の民間エコノミスト予想中央値(実質0.5%)を大幅に上回る。
歳入の内訳:
- 税収は63.51兆円、うち消費税は21.72兆円ー過去最高
- 新規国債発行は32.56兆円、公債依存度31.7%
- その他収入は6.59兆円
安倍晋三首相は19日、歳出・歳入両面での改革努力を継続した結果、「来年度予算も経済再生と財政健全化両立する予算とすることができた」と胸を張るが、当初予算ベースの発行額が10年連続で減っているとはいえ、歳入の3割を新規国債発行で補い、債務残高が積み上がっている状況に変わりはない。
財政指標:
- 基礎的財政収支(PB)は9.20兆円の赤字(0.05兆円悪化)
- 国債発行残高は997.9兆円、過去最高
- 国・地方合わせた長期債務残高1125兆円、対GDP比197%
麻生太郎財務相は20日の閣議後会見で、「世の中は経済なんだから、経済が伸びないといろいろな目的が達成できない」とし、経済成長を考えた場合、「今回の歳出は妥当」との認識を示した。その上で、「歳出改革の取り組みを継続しながら、経済再生と財政健全化の両立を図り、25年度の国・地方合わせたPB黒字化の実現は目指していきたい」と述べた。
エコノミストの見方
IHSマークイットの田口はるみ主席エコノミスト
- 全体として歳出の見直しが大きく進まない中で、来年度予算は経済対策で膨れているという印象が大きい
- 今回の経済対策も規模ありきで、中身がどこまで有効な需要があるのかは懸念を持つ
- 政府の成長見通しはかなり甘い。税収見通しの伸びに合わせる形で成長見通しを作った印象すらある
SMBC日興証券の森田長太郎チーフ金利ストラテジスト
- 国債の金利やリスクプレミアムは、その国の財政状況を反映するという考え自体も最近市場で薄れてきている。日銀の市場でのプレゼンスがあまりにも大きくなりすぎ、市場機能がどんどん低下し、財政の多少の拡大縮小にも反応しないという構図
- 日銀のプレゼンスがこれだけ上がっていることによって2年続けて拡張予算が作られているのは、実質的に財政ファイナンスだ
大和総研の鈴木準政策調査部長
- 成長率を高く見積もれば成長率並みに税収も伸びるので、楽観的ではないかという批判は当然ある
- いくら成長戦略を打ち出しても、債務残高対GDP比が上昇していくと、企業経営者にとって法人税を含めた将来の税負担はどうなるのかが見えず、リスクをとった投資はできない
- 政策への信認が落ちると、企業がリスクを取れずに、生産性も潜在成長率も金利も上がらないという行き詰まった状況に陥りがちになる
(麻生財務相の会見コメントを追加して更新しました)
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