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Photographer: Akio Kon/Bloomberg
Cojp

日銀「次の一手は追加緩和」が倍増、今会合は全員現状維持-サーベイ

  • 「相対的に副作用の小さい手段が選択される可能性」とシティ村嶋氏
  • 財政ファイナンスより「ETF買いの方が質的に良い」とアグリコル

世界経済の先行き不透明感や国内の景気後退懸念が強まる中、日本銀行が次に動くとすれば追加緩和になるとの見方が増えている。

  エコノミスト46人を対象に4-7日に実施した調査で、次の政策変更は追加緩和との予想は17人(37%)と1月の前回調査(18%)から倍増した。年内の政策変更を予想したのは7人で、うち6人が追加緩和だった。日銀が14、15両日開く金融政策決定会合はエコノミスト46人中、全員が現状維持を予想した。

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  内閣府は1月の景気動向指数(一致指数)で基調判断を景気後退局面に入った可能性が高いことを示す「下方への局面変化」に引き下げた。複数の関係者によると、日銀は今会合で海外経済、輸出、生産の現状判断を下方修正するかどうか議論する見通しだ。世界経済の先行き不透明感の高まりや米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ停止を受けて、日銀の追加緩和期待が徐々に強まっている。

  シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミストは、最近の日銀幹部の発言からは「追加緩和への期待を残すことで円高を回避したい一方で、本音では追加緩和は避けたいという雰囲気が透けて見える」と指摘。今後、追加緩和が必要となる場合、「相対的に副作用の小さい手段が選択される可能性が高いように思われる」とみる。

ETF購入

  有力な選択肢とみられているのが指数連動型上場投資信託(ETF)の買い増しだ。英国の欧州連合(EU)離脱問題などで市場が不安定化した2016年7月、日銀はETFの年間購入額を約6兆円に倍増。半年前に導入し不評だったマイナス金利の深掘りや持続性への疑念が生じていた長期国債購入の拡大は行わず、9月会合で操作目標をマネーの量から金利にシフトする長短金利操作に転換した。

  クレディ・アグリコル証券の森田京平チーフエコノミストは、「1ドル=100円を割る円高となれば圧力は強まる」と予想する。その際、日銀に「何が効果があるか」というぜいたくな選択の余地はなく、「何が副作用を最小に抑えられるか」という視点しか残されていないと指摘。国の財政赤字を日銀が従属的に穴埋めする財政ファイナンスよりは「ETF買いの方がよほど質的に良い」と言う。

  ETF買い入れについても市場の価格形成を歪めているとの批判があるほか、日銀財務への影響も懸念されている。黒田東彦総裁は2月27日の国会答弁で、TOPIXが1350程度を下回ると保有ETFの時価が簿価を下回ることを明らかにした。

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美シニアマーケットエコノミストは、株価が財務に与える潜在的な影響が大きくなっていることや、国債と異なり将来売却が必要なこと、ETF購入に関する説明責任の説得力が乏しいことを考えると「さらなる増額は難しくなってきている」とみる。

  しかし、SMBC日興証券の森田長太郎チーフ金利ストラテジストは、「株価下落の程度次第ではその時点で本格的な景気後退に陥っている可能性もある」ので、その場合はETF購入額の拡大に慎重になる余地もないのではないかとみる。

REIT減額

  追加緩和の可能性がささやかれる中、日銀は不動産投資信託(J-REIT)についてはむしろ買い入れペースを縮小している。ブルームバーグ・インテリジェンスの増島雄樹主席エコノミストは、「昨年7月に買い入れ額が上下に変動し得るものと変更して以降、過去7カ月間買い入れペースは鈍っている」と指摘する。

  岡三証券の愛宕伸康チーフエコノミストは「金融機関の不動産向け融資が膨らんでおり、次回金融システムリポートのヒートマップは過熱を示す赤が点灯する見通しだ」と指摘。購入ペース鈍化は「そうした金融不均衡の蓄積を意識した動き」とみる。東海東京調査センターの武藤弘明チーフエコノミストも、日銀は不動産向け融資の過熱を懸念しており、「今後政策的に買い入れを停止する可能性もある」と予想する。

  増島氏はREIT購入の目標額は国債購入額の「めど」とは異なるので、「大幅なペース鈍化が丸1年続くようなら、日銀は正式に目標を変更する必要があろう」としている。

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