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辞めるのが怖い、働き続ける米高齢者増える

  • 退職年齢世代の労働参加率が57年ぶりに20%台に乗った
  • 24年末まで労働参加率で最も強い伸びはベビーブーマーとなる公算
A worker assembles components on a diesel engine at a factory in Seymour, Indiana.

 

A worker assembles components on a diesel engine at a factory in Seymour, Indiana.

 

Photographer: Luke Sharrett/Bloomberg

家族の中で働くのは1人だけという世帯の消失が20世紀に始まった米国で今、高齢者の引退がなくなろうとしている。理由は同じ。お金の心配だ。社会保障のセキュリティーネットが揺らぐ中、年金プランを通じた蓄えは十分でなく、医療費高騰を背景に、仕事を引退するのは待ち遠しいというより、恐ろしい。
 
  資金運用を手掛けるユナイテッド・インカムの新たなリポートは、退職年齢の世代の労働参加率が57年ぶりに20%台に乗ったと指摘する。今年2月時点で働いているか仕事を探している65歳以上の割合は、1985年初めの10%を少し上回る水準から倍増。少なくとも学士号を持ち65歳以上で働いている人の割合は今、53%に上る。85年は25%だった。

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出典:ユナイテッドインカム。現在の人口調査

  高齢の大卒従業員が増えたことで、この年齢層でのインフレ調整後の所得は平均7万8000ドル(約870万円)と、85年の4万8000ドルから63%増えた。一方で65歳未満の平均所得は5万5000ドルと、同期間の伸び率はわずか38%。ユナイテッド・インカムは国勢調査局と労働統計局(BLS)が最近公表したデータを基に算出した。

  BLSの報告書によれば、少なくとも2024年末まで労働参加率で最も力強い伸びを示す見込みなのがベビーブーマー世代。「24年までにベビーブーマーは60-78歳に達する」が、「社会保障給付を受け取る資格を得た後も、一部の人々は働き続けるだろう」としている。

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  表面上は金銭面で不自由していないように見える人々でも、退職後の生計を考えると厳しいものがある。ニュー・スクール・フォー・ソーシャル・リサーチ(NSSR)のテレサ・ギラルドゥッチ教授(経済学)は社会保障給付は退職前所得の約40-50%にしかならないと試算。仕事を辞めた後の生活には、少なくとも退職前所得の80%程度が必要だとの考えが一般的だ。

  同教授の調査によれば、所得分布で下半分を占める年収4万ドル未満の人々には退職後の蓄えがなく、その上の40%の年収4万-11万5000ドルの人々は6万ドル(中央値)、11万5000ドル以上を稼ぐ上位10%は20万ドルをそれぞれ蓄えている。これら推計値に不動産など有形資産や相続の可能性は含まれていないが、それにしても蓄えはひどく少ない。

  大卒で働いてきた人が退職後もそれなりに気持ちよく暮らしていくのに必要な額を同教授が大まかに計算したところ、「100万ドル以上か200万ドル」だという。これでは、引退を先送りする人が増えるのも無理もない。

原題:America’s Elderly Are Twice as Likely to Work Now Than in 1985(抜粋)

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