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市場が熟考し始めた13兆ドルの大問題、量的引き締めに海図なし

  • 米金融当局者は保有資産の縮小開始時期を議論
  • 世界経済の回復続けば、ECBと日銀も追随か
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Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg

量的緩和(QE)という未知の領域に足を踏み入れた世界各国・地域の中央銀行が今、量的引き締めという海図にない水域をどう進むかプランを練り始めている。

  米連邦準備制度理事会(FRB)と欧州中央銀行(ECB)、そしていずれは日本銀行が移行期のかじをどう取るかによって、2013年に起きた「テーパータントラム(市場のかんしゃく)」のような反応が世界で再発するか、あるいは中国による近年の米国債保有縮小への反応のようにほとんど気づかれない程度で済むかの違いが出てくるだろう。FRBとECB、日銀のバランスシートの合計は現在、約13兆ドル(約1400兆円)と、中国やユーロ圏の経済規模を上回る。

Central banks' balance sheet

  13年に資産購入の段階的縮小を示唆してリスク資産急落のきっかけを作ったバーナンキ前FRB議長は、バランスシート縮小のために事前に戦略を定めることを提唱している。フィッシャーFRB副議長は13年のようなかんしゃくの再発を予想しないと述べているが、大規模な巻き戻しを市場が消化できない場合、中銀の練り上げたプランはすぐにつまずくだろう。

  ヘッジファンド、ユーリゾン・SLJキャピタルのスティーブン・ジェン最高経営責任者(CEO)は、「登山で言われるのは、下りは常に上りよりも危険だということだ。バランスシートの縮小は下りだ」と指摘する。

  ただ、日銀がバランスシートの縮小に動くのはかなり先とみられ、ECBのバランスシートは少なくとも今年の終わりまでは増加し続け、縮小は資産購入を段階的に縮小してからしばらく後になる公算だ。

  そうした中、重要な未知数は、巨額の債務を抱える世界経済が景気刺激の解除で見込まれる金利上昇にどう耐えるかだ。中銀のバランスシート圧縮で長期債に売り圧力が高まり、借り入れコストを事実上押し上げる。正しいバランスを取ることは容易ではないだろう。ゴールドマン・サックス・グループのエコノミスト、デービッド・メリクル氏は「実際には、連邦公開市場委員会(FOMC)は徐々に縮小しながら市場の機能を見極めつつ、バランスシートの適切な最終的水準を決める必要が出てくるだろう」と最近のリポートで指摘した。

  市場の反応がフェデラルファンド(FF)金利誘導目標の見通しにも影響するというドイチェ・バンク・セキュリティーズの米国チーフエコノミスト、ジョゼフ・ラボーニャ氏は、「当局はバランスシートを縮小し始める前に市場に周到に準備させ、テーパータントラム再発を回避しようとするだろう」と予想した。
  
原題:Markets Start to Ponder the $13 Trillion Gorilla in the Room(抜粋)

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