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日銀:17年度物価見通しの小幅下方修正を検討、27日会合で-関係者

  • 携帯電話機と通信料が下落、生鮮食品除く食品も低迷
  • 「現実的ではない見通しでは対話成立しない」とJPモルガン鵜飼氏

日本銀行は2017年度の消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)前年比の見通しを小幅下方修正する方向で検討している。26、27両日の金融政策決定会合で策定する四半期の経済・物価情勢の展望(展望リポート)で公表する。複数の関係者への取材で分かった。

  日銀が1月の展望リポートで示した17年度のコアCPI見通し(政策委員の中央値)は前年比1.5%上昇と、民間エコノミストの予想(0.83%上昇)を上回っている。複数の関係者は、携帯電話機と通信料の値下がりに加え、生鮮食品以外の食料価格の上昇の鈍さから、足元の物価が想定を下回っていることを理由として挙げている。

  複数の関係者によると、緩やかな景気の回復基調が続いているため、日銀内では当面、追加緩和、金融引き締めともに必要ないとの見方で一致している。黒田東彦総裁は17日、「世界経済が好転する下で景気回復の足取りもよりしっかりとしたものになってきている」と述べる一方、2%の物価目標に向けて「なお力強さに欠けているので、引き続き注意深く点検していく必要がある」との見方を示した。

  JPモルガン証券の鵜飼博史チーフエコノミストは17日付のリポートで、「日銀がこれまでのように現実的ではない高めの物価見通しを公表していると、市場が中長期のインフレ期待をどう見定めたらよいのかがわからなくなり、対話が成立しなくなる」と指摘。4月の展望リポートで「物価見通しを下方修正し、より現実的な物価見通しを出すべきであろう」と述べた。

さすがにあきらめるのでは

  2月のコアCPIは前年比0.2%上昇と2カ月連続で上昇したが、生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPIは0.1%上昇と引き続き低迷している。企業短期経済観測調査(短観、3月調査)の大企業・製造業の業況判断指数(DI)は昨年12月の前回調査に続き2期連続で改善。輸出、生産が持ち直していることが景況感を押し上げた。2月の完全失業率は2.8%と1994年6月以来の水準まで改善した。

  元日銀理事の早川英男富士通総研エグゼクティブフェローは7日のインタビューで、1月の展望リポートでは春闘を前にしたタイミングに加え、円安、原油高だったため、見通しを下げられなかったとした上で、「今回はさすがにあきらめるのではないか」と指摘。1%台前半への下方修正を予想していた。

  早川氏は実力の物価に近いコアコアCPIが1%程度に上昇すれば日銀は長期金利誘導目標の調整が必要になるとみるが、原油高と円安の影響で、上向きになるかどうかは「まだよく分からない」としている。

政策枠組みの再考が必要かも

  同じく元理事の門間一夫みずほ総合研究所のエグゼグティブエコノミストは3月24日のインタビューで、展望リポートの物価見通しは物価目標に沿った高めの数値になる傾向が強く、「市場と認識を共有しにくいという致命的な欠陥がある」と指摘。市場の関心が今後の金利動向に移る中、「前提となる経済・物価の見方をなるべくバイアス(偏見)なく発信していくことは市場との対話の第一歩だ」と述べた。

  前年比1.5%上昇という17年度の見通しについて、門間氏も「非現実的」であり、民間の見通しである1%程度が「妥当な線ではないか」と指摘していた。

  黒田総裁の任期終了まであと1年。市場では、次の日銀の一手は追加緩和ではなく国債買い入れ減額や金利引き上げなど出口方向になるとの見方が強いが、門間氏は今年の利上げは難しく、来年の可能性も高くないと見る。長期的にも「出口に行ける可能性は自明ではなく、むしろ2%になかなか行かず、政策の枠組みを考え直さなければならないということもあり得る」としている。

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