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米朝首脳会談の行方不透明に、国務長官交代で-決裂なら戦争リスク

  • 北朝鮮から詳細を詰めるための米国への接触はない-ティラーソン氏
  • トップレベルの交渉が失敗すれば誰も外交に頼れなくなる-チャ氏
A copy of the Asia Economy newspaper featuring images of U.S. President Donald Trump, left, North Korean leader Kim Jong-un, right.

A copy of the Asia Economy newspaper featuring images of U.S. President Donald Trump, left, North Korean leader Kim Jong-un, right.

Photographer: Jean Chung/Bloomberg

トランプ米大統領がティラーソン国務長官を解任したことで、米朝首脳会談がいちかばちかの危険な賭けとなる恐れが一段と高まってきた。

  北朝鮮と協議するかどうかを巡り、トランプ大統領とティラーソン氏の間に数カ月前から溝ができていたもようで、トランプ氏が金正恩朝鮮労働党委員長との首脳会談を受け入れる前にティラーソン氏への相談はなかった。新しい国務長官に指名されたポンペオ中央情報局(CIA)長官は北朝鮮問題などで強硬派とされているが、トランプ氏による米朝会談受け入れ即決を擁護している。

Ousted Secretary Of State Rex Tillerson Delivers Farewell Speech At The State Department

ティラーソン氏の記者会見(3月13日)

Joshua Roberts / Bloomberg

  実現すれば現職の米大統領として初めてとなる北朝鮮最高指導者との首脳会談のリスクが一段と増している。トップ会談がうまくいき、さらなる米朝協議の場が整う可能性もあるが、そうならなければ、首脳同士が対立し、米朝が互いを葬り去ることも辞さないと脅し合う状況に戻ってしまう公算が大きい。

  ティラーソン氏は解任前から既に蚊帳の外に置かれていたようだが、北朝鮮ウオッチャーが懸念しているのは、自らの直感に頼ろうとするトランプ氏の気持ちをポンペオ氏が増幅しかねない点だ。北朝鮮の核兵器配備を阻止しようとトランプ氏が繰り返し軍事行動をちらつかせる中で、ティラーソン氏はマティス国防長官と共に、穏健的な役割を果たしてきた。

  ハーバード大学ケネディスクールの朝鮮問題作業部会でディレクターを務めるジョン・パク氏は、金委員長との会談は複雑な交渉の場となるだろうから、「最後の一歩を予想した上で最初の一歩を踏み出すべきだ」と指摘。これまでの「数年に及ぶ断続的な交渉には浮き沈みがあった。米朝首脳会談発表はその最たるピークだ。うまくいかなければ、衝突する」と述べた。

Senate Intelligence Committee Holds Hearing On Worldwide Threats With CIA And FBI Directors

ポンペオ氏

ザック・ギブソン/ブルームバーグ

  韓国特使が北朝鮮からの首脳会談の要請を伝えた際、トランプ氏は書面での資料を一切見ずに韓国側からの説明だけで金委員長との会談を決めた。ティラーソン氏は最後の公式発言の中で、北朝鮮から詳細を詰めるための米国への接触はないと語った。

  北朝鮮の核問題を巡る6カ国協議で2004-07年に米国の次席代表を務めたビクター・チャ氏は、米朝会談での金委員長の提案にトランプ氏が失望する結果となれば、戦争のリスクが高まると分析。「トップレベルで交渉が決裂すれば、もはや誰も外交に頼れなくなる」と論じている。

原題:The World’s Most Watched Meeting Just Got Even More Uncertain(抜粋)

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