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迫る2万円は通過点、出遅れ日本株に海外勢回帰-直近上昇は4位

更新日時
  • 豪AMPキャピタル、新興国市場から日本株へ投資資金をシフト
  • 決算は上振れ派企業が優勢、予想PERにもなお評価余地

日本株市場に外国人投資家が戻ってきている。フランス大統領選が波乱なく通過するなど当面のリスクが和らぐとともに、良好なファンダメンタルズや相対的な出遅れ感が意識されつつある。1年5カ月ぶりになる日経平均株価の2万円突破は中期的には通過点との見方が優勢だ。

  豪AMPキャピタル・インベスターズのネーダー・ナエイミ氏は、「新興国市場から資金を引き揚げ、日本株への投資を増やしている」と言う。年初から世界の主要株価指数に対しアンダーパフォームしていた日本株は、「バリュエーションの観点からみると、相対的にかなり出遅れていた」と指摘。今後のドル高・円安見通しも日本株の追い風になる、とみる。

  日経平均は4月14日に付けた安値から8日までに8.5%上昇、この間に世界の主要96株価指数でベネズエラやギリシャなどに続く4番目に高いパフォーマンスを示した。北朝鮮情勢を巡る過度な警戒が和らいだほか、仏大統領選ではグローバル化を支持するマクロン前経済・産業・デジタル相が勝利し、投資家のリスク回避姿勢が後退。さらに、米国経済をはじめ良好なファンダメンタルズ、為替の円安進行も日本株を押し上げた。一方、昨年末から4月安値までの日経平均は、ロシアやイスラエルなどに次ぐワースト6位の成績だった。

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4月中旬以降の世界のパフォーマンス

  日本株売買代金の7割を占め、ことしの相場低迷の要因となっていた海外投資家の売り越し姿勢にも変化の兆しが出ている。東京証券取引所が9日に発表した4月4週(24-28日)の投資部門別売買動向(東証、名証1・2部等合計)によると、海外勢は現物株を4週連続で買い越し、買越額は2850億円だった。大阪取引所によると、先物(ミニ含むTOPIX、日経平均型合計)でも5786億円買い越した。現物・先物合計で8636億円の買い越しとなり、みずほ証券の調べでは、昨年の米大統領選直後となる11月3週以来の高水準。

  堅調な企業業績やバリュエーションの低さも、日本株が海外株をキャッチアップしている一因だ。野村証券がカバーしている2ー3月期決算企業で、2016年度経常利益が事前の会社計画を5%超上振れた企業が55%だったのに対し、5%超下振れた企業は4%にとどまる(2日時点)。ブルームバーグのデータによると、日経平均の17年の予想PERは17.3倍と、足元の株価上昇後も過去5年の平均17.5倍をやや下回る。米S&P500種株価指数の予想PERは18.5倍。

  損保ジャパン日本興亜アセットマネジメントの上野賢司シニア・インベストメントマネジャーは、日本株は「四半期ベースで増収になっているもようで、ファンダメンタルズが悪くないことが注目されている」と言う。時価総額が大きく、「日本株の顔のような銘柄が買われている。通常のバリュエーションが安い銘柄を買うような動きよりも全体を買う、日本株市場を買う動きがみられる」とも話した。

  日本株のストラテジストらも引き続き強気姿勢だ。シティグループ証券は、仏大統領選後の金融市場におけるリスクオンの動きが強まったことを踏まえ、8日付で5月の日経平均の予想レンジ上限を1万9750円から2万500円に上方修正した。飯塚尚己ストラテジストは、地政学的イベントなどに大きな波乱がないことを条件に、今後は1株利益成長に支えられた業績相場の様相を強めると予想した。中期的なターゲットは年末2万1000円、来年末2万2000円台としている。

  日経平均の2万円到達は時間の問題とみる市場関係者が多い半面、先行きに慎重な投資家もいる。しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹運用部長は、「決算はある程度保守的に出ても、織り込んでいる雰囲気はある。6月の米国の利上げがもうすこし見えてくる必要がある」と、2万円定着にはもうひと材料欲しいとの認識だ。藤原氏は2万円定着の条件に、ドル・円相場の1ドル=115円を挙げた。

  10日の日経平均は一時95円高の1万9938円と、日中ベースの年初来高値を更新。ドル・円相場が2カ月ぶりの円安水準に振れる中、電機や機械など輸出株、鉄鋼など素材株の一角に業績好転を見込む買いが入った。

日経平均と海外投資家の動向
(文末に10日の相場動向を追記.)
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