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東芝WHの新原子炉に高まる関心、初号機稼働すれば不安払拭との見方

  • インド、南ア、メキシコ、チェコなどでWH原子炉の導入検討
  • 費用上振れリスク避けるため新型炉の採用には運転実績が必要

新興国を中心に原子力発電所の新設が計画されており、経営破綻した東芝傘下ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)が設計した次世代原子炉「AP1000」への関心は依然として高い。すでに6基の導入で交渉中のインドに加え、これから採用する技術を決定する南アフリカ共和国、メキシコ、チェコもAP1000を選択肢の一つとして検討している。

  南アフリカ原子力公社のプムズィレ・ツェラネ最高経営責任者(CEO)はブルームバーグの取材で、中国で運転を開始する予定のAP1000の初号機が技術面の課題を克服できていれば「問題はない」とし、計画中の原子炉6-8基の設計はWHも含めた事業者の中から選ぶ考えを示した。6月にも提案依頼書を事業者に通知し、来年1-3月期に発注先を決定する予定だ。

China issues nuclear safety blueprint, eyes $13 billion investment

建設中の三門原発(2011年)

Photographer: Wang Kaimin/Imaginechina via AP Photo

  持ち株会社を含め98億1100万ドル(約1兆900億円)の負債を計上して3月末に米連邦破産法11条の適用を申請したWHは、規制強化により米国で建設中の原子炉4基の工期が長期化し、建設費用が上振れしたことが経営破綻の引き金となった。中国・浙江省ではAP1000の初号機として三門原発1号機が建設されているが、2013年に予定されていた運転開始時期は今年にずれ込んでいる。

  南ア原子力公社のツェラネCEOは、「すでに稼働している参考となるようなプラントがあれば、それと同じようなものが欲しいということができる」と述べ、AP1000については、サプライチェーンの制約や規制強化への対応などにより工事が遅れている初号機の動向を注視する姿勢を示した。新技術であるために工期が延びるリスクが解消できれば新興国での採用が進み、WHの再建に向けた道筋が開ける可能性もある。

デザインは良い

  原子炉3基の新設を計画するメキシコも南アと同じスタンスを取っている。エネルギー省のアレハンドロ・ウェルタ原子力政策副局長は12日に都内で講演し、WHの新型炉については「デザインそのものはいい」と評価。ただ新技術を採用して建設遅延によるコスト増に直面するような「二の舞を演じたくない」とし、採用する原子炉に求める条件として、米原子力規制委員会の承認を得た設計基準であることに加え、過去に運転経験があることを重視している。

  AP1000は、電力供給が失われても重力や圧力を利用して冷却材が自然に循環し、3日間炉心を冷やし続けられるような設備が採用された「第三世代プラス」と呼ばれる原子炉の一つ。福島第一原発事故で起きたような電源喪失による炉心溶融(メルトダウン)を防ぐほか、耐震性の向上など安全性が高められた。また英国と米国の規制当局から設計認証を取得した唯一の次世代炉でもある。

  一方、中国やロシア、韓国など独自の原子炉技術を持つ国も自国内での建設に加えて、海外展開を加速している。日本原子力産業協会によると、17年初時点で世界には計439基(出力4億キロワット超)の原子力発電所がある。建設中と計画中のものが計167基(同約1.8億キロワット)あり、このうち中国では47基、ロシアは25基。韓国はアラブ首長国連邦初の原発プロジェクトを受注している。

価値損なわれない

  元米国原子力規制委員会のレイク・バレット氏は電子メールで、「ロシアや中国、韓国の原子炉は基本的な安全能力を有しているが、AP1000と同じ技術レベルは持っていないだろう」と指摘。米国での原発建設事業でコスト超過分をWHが負担する契約になっていたために多額の損失が生じてしまったが、「その素晴らしい製品や企業の価値が損なわれることはない」と述べた。

  元米エネルギー省副長官のダニエル・ポネマン氏はブルームバーグの取材に対し、「初号機で新技術採用に伴う課題が克服されれば、それ以降はより安く、早く、効率的に建設できる」との見方を示した。

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