日本株は続伸、通信や陸運、電力など内需買われる-為替影響度少ない
長谷川敏郎-
FOMC議事録後のドル・円、一時111円台半ばと円やや強含む
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緩やか米利上げは好影響、企業業績やバリュエーション評価崩れず
25日の東京株式相場は続伸。米国の緩やかな利上げは経済情勢に好影響との見方が次第に優勢となり、為替の影響度が少ない情報・通信や陸運、倉庫、建設、不動産株など内需セクター中心に買われた。円高が燃料コストの低減につながる電気・ガス株も高い。
TOPIXの終値は前日比3.31ポイント(0.2%)高の1578.42、日経平均株価は70円15銭(0.4%)高の1万9813円13銭。日経平均の上げ幅は一時100円を超えた。
T&Dアセットマネジメントの山中清運用統括部長は、「米国経済は足元は良いが、年後半は中だるみする可能性があり、日本株は若干円高リスクを抱えている」と指摘。ただし、「日本企業はベースとなる収益性を徐々に高めており、現状株価はバリュエーション面から決して心配するようなレベルではない」と言う。1ドル=108円の今期の企業前提を大きく上回る円高が進まなければ、「世界景気が落ち込まない中、株価はじわじわと上に向かうだろう」と予測した。
米連邦準備制度理事会(FRB)が24日に公表した5月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合議事録によると、大部分の当局者はもう一段の利上げが近く適切になると判断。4兆5000億ドル規模の当局のバランスシートについて、緩やかに縮小させる計画を支持した。さらに、数人の参加者がインフレの進展が減速した可能性がある、との懸念を表明したことも示された。
議事録公表を受け、きょうの為替市場では1ドル=111円40ー70銭台で推移、前日の日本株終了時点111円94銭からややドル安・円高水準に振れた。きょうの日本株は、円高リスクへの警戒で小安く始まった後、主要株価指数は前日終値を挟み一進一退。しかし、午前半ば以降に米国株の行方を暗示するシカゴ24時間電子取引システム(GLOBEX)のS&P500種株価指数先物が堅調に推移すると、徐々に上昇が鮮明となった。
東海東京調査センターの武藤弘明チーフエコノミストは、「FOMC議事録は年内の利上げがあと多くても2回で、ゆっくりと利上げすることを通じて円・ドルレートにとっては良くない」とした半面、「程よいペースで米景気が拡大する中、利上げを急がない状況は世界経済にとって良い」と分析。イベント通過後も急激な円高が進まず、今期増益が見込める1ドル=111円台で横ばう環境は、「日本株にとっても、高望みさえしなければベスト」との見方を示した。
TOPIXの上昇寄与度や業種別上昇率の上位に並んだのは内需セクターだ。「為替が外需にマイナスなら内需という消去法によって投資対象がシフトしている上、為替の円強含みは国内消費環境にもプラス」と武藤氏は言う。
もっとも、上昇・下落銘柄数の百分比を示す騰落レシオは164%まで上昇、昨年12月の165%に迫るとともに、過熱圏を指す120%以上を大きく上回る。テクニカル指標は株価指数の伸び悩みにつながり、東証1部では値下がり銘柄が優勢となった。野村証券投資情報部の若生寿一エクイティ・マーケット・ストラテジストは、「騰落レシオの上昇は、指数影響度の大きい銘柄が上がりにくい中でも全体の底上げが進んでいることを示す」とし、「底上げが止まるか、それとも影響度の大きい銘柄が循環物色で上がるかどうかが日経平均の2万円超えを決める」と話していた。
東証1部33業種は電気・ガスや倉庫・運輸、情報・通信、海運、陸運、建設、不動産、その他金融など16業種が上昇。鉱業や鉄鋼、石油・石炭製品、証券・商品先物取引、繊維、食料品、保険など17業種は下落。売買代金上位では、「乃木坂46」アプリが人気のエムアップ、SMBC日興証券が強気判断で調査を開始した日本ライフラインが急騰した。ホンダやJT、SUMCO、ダイキン工業、東ソーは安い。
- 東証1部の売買高は16億7727万株、売買代金は2兆2214億円
- 値上がり銘柄数は817、値下がりは1039