本家本元のカマンベール・チーズが絶滅の危機に直面-生産量激減
Larissa Zimberoff柔らかく熟成されたカマンベールは、米国なら多くの食料品店で手に入り、絶滅が危ぶまれているチーズだという印象は与えない。
だが、フランス政府と欧州連合(EU)がお墨付きを与えた正真正銘のカマンベールは、仏ノルマンディー地方のカマンベール村で飼育された特定種の乳牛の生乳を使い、伝統製法で作られた「カマンベール・ド・ノルマンディー」のみで、これがますます入手困難になっている。
EUの原産地呼称保護(PDO)指定を受けたこの白かびチーズは、しばらく常温に置いておくとクリーミーな内側部分がさらに柔らかくなる。外皮(ぜひ食べてください)は茶色の斑点が少しあるものが理想で、大量生産のカマンベールだとここは真っ白だ。
このカマンベール・ド・ノルマンディーの生産量が激減している。世界で年間3億6000万個生産されるカマンベールのうち、PDO製品は400万個と、全体の1%程度しかない。背景には大手生産業者による小規模農場の買収があるほか、2007年に大手業者が認定基準の緩和を要求したこともある。伝統製法を守る小規模生産者と大手が対決したこの「カマンベール戦争」は、生乳で作ったカマンベールだけがPDO認定を受けられるとの判断を仏政府が下して1年後に終結した。
カマンベールの熟成期間は通常1カ月程度と短い。米国では生乳チーズや熟成期間が60日未満のチーズは輸入が認められていないため、カマンベール・ド・ノルマンディーを正規に入手する方法はない。マレーズ・チーズの殺菌乳を用いたカマンベールや、ミネソタ州のアレマー・チーズの「ベント・リバー」はそれに近い製品と言える。だが、お金と時間があり、希少なチーズを絶滅に追い込みたくないという人は、フランスに足を運んで正真正銘の認定品を味わうのが一番だろう。
原題:One of the World’s Great Cheeses Might Be Going Extinct(抜粋)