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トランプ大統領の元選対本部長、ウクライナ親ロ派後押しで荒稼ぎか

2013年3月、ジム・スラッタリー元米下院議員はウクライナの首都キエフを訪れた。同国のヤヌコビッチ大統領(当時)に政敵のティモシェンコ元大統領を刑務所から釈放するよう説得するのが目的だったが、別の米国人が収監を後押ししていたとは知る由もなかった。

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インタビューに備えるマナフォート氏(昨年7月17日)

Photographer: Sam Hodgson/The New York Times/Redux

  その米国人とは、ポール・マナフォート氏。16年の米大統領選でトランプ氏の選挙対策本部長を一時務めた人物だ。マナフォート氏こそ、トランプ大統領とロシアを巡る疑惑と懸念の中心にいる。

  ウクライナ、ロシア、米国での20数人に及ぶインタビューと、ウクライナ検察当局のおびただしい文書から、マナフォート氏がウクライナで従事していた業務の詳細が見えてきた。ポピュリズムに訴えたトランプ氏の選挙運動の原型になったとみられるものもある。

  マナフォート氏が同国の親ロシア派政治家と関わるようになったのは05年以降。10年のウクライナ大統領選では、強盗や暴力事件の前科のあるヤヌコビッチ氏を人気候補に生まれ変わらせる立役者となった。

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ヤヌコビッチ氏とプーチン大統領(キエフで、2013年12月)

Photographer: Alexander Nemenov/AFP/Getty Images

  ウクライナ議会議員のセルヒイ・レシュチェンコ氏は「ヤヌコビッチ旋風を効果的に起こすため、マナフォート氏は極めて微妙な問題に訴え掛けた」と指摘。「ウクライナ社会を分断するネガティブ戦術を使い、プーチン氏が単純な目標を成し遂げる後押しをした」と続けた。

  マナフォート氏はヤヌコビッチ氏に対し、米国の政治家のように話し、身だしなみを整えるよう教授した。ヤヌコビッチ氏が党首を務めていた地域党の本部で見つかった手書きの台帳によると、07年から12年までの5年間にマナフォート氏に対して少なくとも1270万ドル(約14億1000万円)が支払われた。

  この台帳を巡っては、米連邦捜査局(FBI)とウクライナの汚職対策当局がマナフォート氏向けを含め違法な支出がなかったか調べを進めている。マナフォート氏のスポークスマンは、出費が大きかったため、この支払額イコール利益ではないと回答した。

  マナフォート氏は14年にロシアがクリミアを併合しヤヌコビッチ氏がロシアに逃亡した後もウクライナに17回入国し、親ロシア派政治家の再選を手助けした。マナフォート氏と協力した党関係者によると、これで100万ドル以上は稼いでいるという。マナフォート氏のスポークスマンはこの支払いについてコメントを控えた。

  ウクライナ疑惑を受けてトランプ氏の選対本部長を辞任したマナフォート氏はこれまで不正はなく、ロシア政府高官といかなる接触もないとの主張を続けている。同氏はこの記事のため要請したインタビューを断った。米司法省もコメントを控えた。

原題:Trump and Russia: The Lucrative Ukraine Years of Paul Manafort(抜粋)

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