【コラム】年16%の債券利回り、恐ろしいほど魅力的
コラムニスト:Marcus Ashworth-
トルコの資産価格、ついにリスクに見合う水準に
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エルドアン氏、当てにできないが合理性示すことも
6月24日の選挙で勝利したトルコのエルドアン大統領は今月9日、就任宣誓を行う。その後で投資家にとって重要になるのは、大統領が中央銀行にどれだけ独立性を与えるかだろう。展開次第では、極めて慎重ながらトルコへの投資を検討してもいいだろう。現水準ならリスクに見合った対価が得られるからだ。
トルコへの投資は勇気がなければできない。エルドアン氏が権力を固め、上昇するインフレ率の抑制に必要な独立性を中銀から奪う中で、トルコ・リラは年初来でドルに対して約25%下落した。ただ、エルドアン氏の選挙勝利で一定の不確実性はなくなり、同氏が就任宣誓後に発表する経済政策が転換点にもなり得る。
トルコは大幅な経常赤字を抱え、ドル資金の流入に大きく依存していることから、リラ安はとりわけ厳しい。エルドアン氏が金融政策の独立を維持すると宣言すれば、為替相場には画期的な出来事になる。一方、再選に向け選挙戦で唱えた金融政策への関与を再び持ち出せば、悲惨な相場が待ち構える。
トルコ中銀は4月後半以降、金利を合計で5ポイント引き上げて17.75%とし、6月7日の政策会合でタカ派寄りの姿勢を示した。だが6月のインフレ率は市場予想を超える15.4%。生産者物価の伸びは24%近くに達しており、インフレはさらに加速しそうな様子だ。エルドアン氏は手にした強大な権力を独裁者になるために使うのか、専門家に委ねて経済の悪化を防ぐために使うのか選択を迫られている。
もし後者が選ばれれば、強欲な、もとい勇敢な投資家は大幅なリターンを手にできるだろう。10年物リラ建てトルコ国債の利回りは16.7%前後で、ドイツ債の0.3%は言うに及ばず、ルーブル建てロシア国債の7.7%をもはるかに上回る。リラ相場が安定するか、緩やかなペースで下落したとしても、リターンは大きい。
現水準から下げた分の一部を回復するようなことがあれば、うまみはいっそう増す。リラが5%上昇すればリターンはその分増加し、リラ上昇に拍車を掛けるだろう。エルドアン氏が中銀の地位向上と経済に適切な支援を表明すれば、このような展開を実現させることは可能だろう。
問題は、エルドアン氏を当てにはできないと言うことだ。衝動的に行動し、経済も理解していない。だが一方で、中銀に5ポイントの利上げを許したように、あふれんばかりの合理性を示すこともある。
(このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、当社オーナーの意見を反映するものではありません)
原題:That 16% Bond Yield Looks Awfully Tempting: Marcus Ashworth(抜粋)
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