米下院本会議、トランプ氏の弾劾決議案を可決-上院で弾劾裁判へ
Catherine Dodge、Billy House-
「権力乱用」と「議会妨害」の2つの条項、賛成多数で可決
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民主党は来年の選挙で報いを受けるとトランプ大統領は警告
米下院本会議は18日、トランプ大統領を「権力乱用」と「議会妨害」で弾劾する決議案を賛成多数で可決した。弾劾訴追された米大統領は、アンドルー・ジョンソン大統領、ビル・クリントン大統領に続き史上3人目。
2020年大統領選を有利に進めようとするトランプ氏が、ウクライナのゼレンスキー大統領に対し、軍事支援を見返りにバイデン前副大統領の疑惑調査を要求したとされる「権力乱用」に関する条項が賛成230、反対197、議会からの調査協力要請の拒否が「議会妨害」に当たるとする条項は賛成229、反対198で可決された。賛成票を投じた共和党議員は皆無だった。本会議審議は6時間余りにわたった。
上院は2つの弾劾条項についてトランプ大統領を有罪とし罷免すべきかどうかを審理するため来年早々に弾劾裁判を開く。ただ、共和党は上院の過半数議席を握るため、トランプ氏が無罪となることはほぼ確実だ。
世論調査ではトランプ大統領弾劾・罷免への国民の支持が50%を大きく上回ったことはほとんどなく、20年大統領選を控えてトランプ氏の政治的な立場が悪化した兆候もほぼ見られない。
下院の弾劾手続きで駆り立てられた怒りに、両党の支持者は活気づいたが、来年11月の大統領・議会選の時点で、この問題が有権者の投票行動に影響を及ぼす中心的なテーマとなるかは不明だ。
トランプ大統領は下院採決開始の数分前にミシガン州での選挙集会に登壇した。同州は16年大統領選でトランプ氏勝利の鍵を握った州で、来年の選挙で再選を目指す上でも重要州と目されており、弾劾訴追決議案を巡る議会審議にリアルタイムで反論した。
大統領は会場に集まった聴衆に対し、「3年に及ぶ悪意に満ちた魔女狩りやでっち上げ、ペテンを経て下院民主党は今晩、愛国的な多くの米国民の票を無効にしようとしている」と訴えた。
さらに、下院民主党が「米国の有権者に対し深い憎悪と侮辱」を示したとし、「この違法で党派的な弾劾の動きは民主党にとって政治的自殺行為となる」とし、同党が20年の大統領・議会選挙で報いを受けることになると警告した。
本会議での審議の冒頭にペロシ下院議長は、トランプ大統領を「米国の国家安全保障への進行中の脅威」と呼び、「われわれは今行動しなければ責務を放棄することになる」と表明した。一方、下院司法委員会の共和党筆頭コリンズ議員(ジョージア州)は、大統領は何も悪いことをしていないと反論した。
ペロシ議長は採決後、「下院民主党の道徳的勇気をこの上なく誇りに思い、心を揺さぶられた」と話した。
ホワイトハウスのグリシャム大統領報道官は下院採決直後の声明で、「大統領は次のステップに進む準備を整えており、身の潔白が全面的に証明されると確信している」とコメントした。
大統領弾劾手続きの舞台は今後上院に移り、連邦最高裁のジョン・ロバーツ長官の下、弾劾裁判が来月開かれる。大統領の有罪判決には3分の2以上の票が必要だが、共和党が過半数議席を握るためトランプ大統領が無罪となるのはほぼ確実だ。マコネル共和党上院院内総務は既に、自身が「公平な陪審員ではない」と述べ、弾劾手続きを速やかに決着させる方針を表明している。
トランプ氏は大統領として弾劾訴追を受けながら、今後再選に向けて与党から指名されるであろう初めてのケースにもなりそうだ。ただ、トランプ大統領が有罪判決・罷免を免れても、下院による弾劾訴追はトランプ政権と同氏のレガシーに汚点を残すことになる。
原題:Trump Impeached on Two Counts by House, Setting Up Senate Trial、Trump Calls Impeachment ‘Suicide’ for Democrats as Gavel Falls(抜粋)